『ビルシャナ戦姫』フルコン感想

 『ビルシャナ戦姫』、フルコンしましたー!

 この辺りの日本史にめっぽう弱い私でしたが、字典機能のサポートもあり、ちゃんと話についていくことが出来ました。面白かったです。

 以下の感想は大いにネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 ヒロインと攻略キャラの関係構築を丁寧に描いている作品だったな、というのが第一印象です。

 

 春玄や弁慶など、序盤から義経が女であることを知っているキャラでさえ、義経のことを過剰に女扱いせず、一人の人間として、武人として向き合ってくれていたのが良いなあと思いました。どの√であっても、性別関係なしに人間として絆を深めてから(幼馴染、主従、好敵手など)、恋愛モードに移っていくんですよね。同時進行ではない

 たとえば教経が義経に抱いていた執念、性別に依らない、恋愛感情とは違うあのクソデカ感情、本当に好きです。

 春玄も、最初は幼馴染に近い従者ポジションかと思っていたのですが、自分は従者では無いとしっかり一線を引き、ある意味家族に一番近い、唯一無二の存在として関係を確立してから恋愛が始まったのも良いな~と思いました。

 

 ヒロインが男装設定という割に、「女の子が戦場に出て戦うなんて危険すぎる」「相手は男だというのにこのドキドキはいったいなんだろう」「女のくせに/男なのに」みたいなワードが無かったのは、すごく配慮されていたんだな~と思います。

 そういう展開にシナリオを割かれてもストレスですし(その展開をやる時間があるならもっと他に描くことあるでしょと思ってしまう)、ヒロインが女であることがバレても大して取り沙汰されず、その実力と気概でナチュラルに周囲に受け入れられていたのは良かったなあと思いました。

 

 ただ、人間愛(便宜上の表現)的な絆の深め方をしてきた割に、人間関係が恋愛フェーズに移行すると、とたんに攻略キャラが義経のことをめちゃくちゃ女扱いしてくるのがちょっと私は戸惑いました。周囲に女扱いされない分、(恋愛モードに入った後の)攻略キャラが「女扱い」を一手に担っているというか。急に、急に女扱いしてくるやん……!?!?

 望むと望まざるに関わらず源氏の家名を背負わされ、苦しんでいたのと同じように、「男であること(男装)」もまた義経の意思に関係なく押し付けられたもの。義経と絆を深めた攻略キャラが、それを取っ払った「女の子としての義経」と恋愛することは決して間違ってない、というかむしろ正解なんです。確かにそこは彼女の本質だし核心です。そうなんですけど、なんかこう、ね、突然すぎない!?!?という感覚。上手く言えないんですけど……。

 まあ端的なところだと、義経と恋愛モードに入った後の弁慶がやたら「姫」呼びしてくるのが気になるとかそういうことです。もうちょっと人間愛を最後まで貫いてくれる√があっても良かったなあというか……たしかに性別って恋愛において重要なファクターですけど、でもそこに執拗に帰ろうとしなくても良くない?というか……彼女が女性であることは紛れもない真実ですが、彼女が十数年間男として、武士たる精神で生きてきたこともまた事実ですし。

 乙女ゲーなんだから異性恋愛の形を取るのは当たり前なんですけど、それにしたって意外とみんな普通の男女に収まったなというか。

 私が一番目に攻略した教経は特に、中盤までかなり純粋な人間愛(便宜上の表現)だったのでちょっとそういう話であることを期待しちゃったんですよね。せっかくの男装という装置でしたが、無難な舵取りをした結果、どうにも生かし切れてなかったなあみたいな歯がゆさはあります。攻略キャラと結ばれた後も男装したまま男として生きる√が欲しかったとまでは言いませんけど、にしてもそういうことをやれるだけの土壌は整っていたわけですから(物語のスケールの大きさ、男装設定)。

 決してダメだったわけではないんです、良かったんですけど、全然良かったんですけど、もっとなんかやることもできたよね、みたいな物足りなさ。

 逆に言うと、恋愛が始まると義経のことを女扱いせざるを得なくなるから、同時進行ではなく人間愛フェーズと恋愛フェーズで段階をきっちり分けたのかなーと思います。同時進行にしていたら、武士として源氏の生き残りとして生きていく在り様がもっと薄れていたと思うので。

 

 

 うーんあとそれ以外の話をすると、私昔からアクションとか戦闘場面の多いジャンルを通ってこなかったので、戦闘シーンが苦手なんですよね。正確に言うと、小説やノベルゲーにおける戦闘シーンが苦手なんです。私は文字を読んで脳内で映像に起こすタイプの人間なので、戦闘シーンを文字描写でやられ続けるとまどろっこしくて、どうでもよくなっちゃう(笑)。戦闘の過程はいいから結果だけ分かればいいみたいな気持ちになっちゃうんですよね……。

 ビルシャナでは、後ろ向きの立ち絵があったりして、戦ってるっぽく見えることに最初はちょっと感動もしたんですが、慣れてくるとその感動も無くなって、詳細がよく分からない戦闘シーンが続くことにもやっとしたり……。

 特にもやもやしたのは弁慶√ですね。あれって最後の戦いの前に、義経と弁慶が話し合って打ち解けて、もう心は通じ合ってたじゃないですか、あとは平家とのけじめをつけるだけだったじゃないですか。最後だしこの戦いに勝つことは見えているのに、案外引っ張られるので、まだ終わらないのかこの戦闘、という気持ちにはなりました(苦笑)。

 

 

 

 なんだか不満点ばかり書き立ててしまいましたが、義経と攻略キャラが距離を縮めていく様子は丁寧だったし、絵も綺麗だったし、普通に面白かったな、というのが感想です!糖度は控えめだったので、FDなどで各√の後日談が描かれたらいいですね!